専門分野における究極の追求

近日、HARVESTING代理のTHE NORTH FACE(以下「TNF社」という。)対太倉市城厢区某服装経営部商標権侵害差止等請求事件は勝訴判決を受けた。
一
事件経緯
原告のTNF社は「
」商標の権利者であり、アパレル業界で高い認知度を有する。被告は原告の許諾を得ずに、TIKTOKでオンライン店舗を開設して原告商標が付された服装を販売していた。さらに、被告は販売に際して第三者鑑定機関が発行した「逐一鑑定」報告書を提示し、「韓国版正規品」であると証明しようとした。
2023年3月12日、太倉市市場監督管理局は消費者の通報を受け、被告の営業所で3500件超、総額104万元相当の「韓国版TNF」商品在庫を押収した。調査段階において、被告は少量の韓国語の領収書、韓国TNF公式サイトでの注文履歴を提示し、並行輸入及び「合法的出所」の抗弁をした。また、被告は多数の鑑定機関の報告書も提出し、「韓国版正規品」であると裏付けようとした。それに対し、太倉市市監局は、1)ネットでの注文履歴と押収品の数量は明らかに合致しないこと、2)押収品の出所を辿れる証拠チェーンは不在であること、3)第三者鑑定機関の報告書は法的証明力はないことを踏まえ、被告の抗弁を認めず、同年7月25日に罰金60万元等の行政処罰決定を下した。一方、既に販売された商品につき、市監局は、鑑定が不可能なため、侵害品と認定できないとし、TIKTOKでの販売数量・金額を調査せず、罰金算出の根拠ともしなかった。
その後、TNF社は前記事実に基づき被告を提訴し、未認定のネットで販売された商品について別途審査するように請求し、60万元の損害賠償を求めた。

二
注目点
1、「韓国版TNF」は行政、法院両方に権利侵害とされた
被告は係争商品は「韓国TNF正規品」であると主張し、少量の韓国語の領収書、韓国TNF公式サイトでの注文履歴等を提示して並行輸入及び「合法的出所」の抗弁をした。


それに対し、行政機関と法院は一致であり、一方では被告はかかる入荷伝票と具体的な入荷経路を提示できず、係争商品は合法的な通関手続きを経て輸入されたと証明できない、他方では、「
」商標につき、韓国と中国での権利者は違っており、しかも両社間に使用許諾もなければ関連会社でもない、商標権保護は属地主義が採用されるため、たとえ係争商品は真に韓国由来であっても、中国で何らの権利も有しないと認定された。よって、法院は、被告がTNF社の許諾を得ずに同一の商品に原告商標と同一の標章を使用して販売する行為は商標権侵害に該当すると解した。
本事件において、一部の商品は確かに韓国から輸入されたかもしれない。しかし、そうであっても、「並行輸入」には該当しない。というのも、同一商標に関する権利は中韓両国でそれぞれ異なる者に属し、しかも両権利者は関連会社ではないため、両国間の輸出入は「並行輸入」に該当せず、かかる商品は法的に正規品とみなされない。実務上、「不真正並行輸入」事件において、法院の姿勢は明白であり、すなわち、中国の商標権者による同意を得ずにかかる商品を輸入する行為は商標権侵害に該当するのである。例えば、(2023)浙01民初627号TNF社対杭州某社商標権侵害事件において、法院は「係争商標は両国においてそれぞれ異なる主体に属するため、係争商品はいわゆる並行輸入商品に該当せず、被告による商標権消尽の抗弁は成立しない」と述べた。
2、「行民交錯」の事件において、法院は行政摘発で未審査の事実を補足認定する権限を有する
知財権侵害に関する民事、行政事件における立証基準は必ずしも同一ではなく、同じ事実と証拠であっても、行政事件において、合理的な疑いを差し挟む余地があるとされて採用されない可能性がある、ところが、民事訴訟段階に入り、法院は「証拠の優越」原則に則り、事実全般を踏まえて改めて権利侵害と認定することもできる。
本事件において、行政機関は押収品の総額のみに基づいて処罰決定を下し、「既に販売された服を鑑定することができない」とし、権利侵害の認定はしなかった。一方で、続く民事訴訟において、法院は行政が未審査のECサイトでの販売行為に焦点を当て、原告提出のTIKTOKでの売上高に関する証拠を採用し、また、原告の申立てによりTIKTOK運営者にかかる店舗販売データの提出を要求することにより、係争店舗は既に1200件超、総額125万元相当の侵害品を販売したと究明し、これにより被告に27万元の損害賠償を命じた。


3、第三者鑑定機関による報告書は法的証明力を有しない
本事件において、被告は第三者鑑定機関と「実物鑑定契約」を締結し、第三者鑑定機関が被告の商品につき「逐一鑑定」サービスを提供して報告書を作成すると約した。また、被告は複数のバイヤーとの間にも紛争があったため、一部の事件に中国検験認証集団上海有限公司(以下「中検」という。)、「得物」、「識貨」アプリ等に鑑定報告書の作成を依頼した。これらの報告書は一律に係争商品は「正規品」と結論づけている。
前記報告書に対し、行政機関は「法的効力を持たず、採用しない」と明言し、さらに、法院はこれらの報告書を言及さえもしなかった。その原因として、第一に、法院は係争商品の出所の疑わしさ、仕入れ価格と販売価格との顕著な差異等事実全般を踏まえて既に初歩的な心証を得たこと、第二に、前記第三者鑑定機関はかかる資質を有する司法鑑定機関ではなく、その結論は法的効力を有しないことが考えられる。


さらに言えば、前記第三者鑑定機関やプラットフォームはかかる資質を有する司法鑑定機関ではないどころか、元々その結論に至る根拠、論理、手法等に諸々の不備があると言わざるを得ない。例えば、前記報告書が提示した鑑定基準は「トレンドファッションの鑑別にあたっての通用要求と判定方法」又は「業界研究基準」のみである。さらに、一部の機関は提示された商品の写真のみに基づいて結論を下した。
もっとも、ブランド品の真偽鑑別は商品の出所究明であり、その判断に供する統一された指標はない。通常、ブランド品の真偽鑑別にブランド側の専用マークその他の営業秘密が関わっており、当該商品の特性に応じた判断方法により権利者出品のものであるかどうかを識別できるのは、商標権者やその代理人のみである。よって、「トレンドファッションの鑑別にあたっての通用要求と判定方法、業界研究基準」による結論はあくまで商品の品質に関する評価であり、決して商品出所の認証とは言えない。
実際、鑑定機関が正規品を偽物、又は偽物を正規品と結論づけることは多見される。例えば、(2021)粤0192民初10203号曹某対広州唯品会電子商務有限公司電子売買契約紛争事件において、原告の曹某はECサイトの「唯品会」でGUCCIベルトを購入し、「得物」による鑑定で偽造品とされたため、法院に提訴したが、その結果、係争商品はGUCCI出品の正規品であるとわかった。本事件において、広州互聯網法院は「得物アプリ、優奢易拍プラットフォームによる鑑定意見又は『鑑定報告書』はかかる資質を有する鑑定機関が発行するものではなく、また、当事者は前記第三者機関が鑑定の資質を有し、鑑定担当者が鑑定能力を有することも証明できないため、当該鑑定意見や『鑑定報告書』は中立性、客観性、権威性に乏しく、係争商品は偽装品であると証明するには足りない」と明言した。
実務上、商品の真偽鑑定は誰に委ねるべきかについて、現在法律レベルのルールはないが、1987年より、元国家工商行政管理局(現「国家市場監督管理局」)は一連の返答書において「商標権者が発行する意見書は商品の真偽判断の根拠になり得る」と明らかにしている。例えば、『登録商標を使用する商品の真偽鑑定に関する国家工商行政管理総局の返答書』や『商標権侵害判断基準』等文書は一律に「登録商標が付された商品の真偽鑑定は、当該登録商標の合法的使用者又は法定検査機関に委ねるものとする。前記両者の結論に齟齬があって、登録商標の合法的使用者は有効な証拠を提示してその結論が真実で合法的であると証明できる場合、登録商標の合法的使用者の鑑定結論に準ずるものとする」、「商標権侵害にかかる取締事件において、担当機関は商標権者に対し、係争商品は権利者が生産し、又は生産を許諾したものであるかどうかに関する書面の識別意見を提出するように要求することができる」と定めている。
訴訟事件においても、類似する考え方もある。例えば、(2021)云民终2144号事件において、雲南省高級人民法院は「係争商品は偽造品であるか否かに関する判断を誰に委ねるか、現在法律と司法解釈に規定はない。通常なら、第三者専門鑑別(鑑定)機関による鑑別(鑑定)は最も合理的であるが、このような第三者機関は全国中に存在しない。法院の選択に供する鑑別者は、商標権者又は商標権者が依頼、指定した機関もしくは個人であり、なぜなら、彼らだけがかかる能力と条件を有するからである。これしか選択肢はない」と述べている。
まとめ
本事件は「行民交錯」事件として、商標権侵害事件における行政機関と法院との接合、補足関係を浮き彫りにしている。行政機関と法院は一律に「韓国版TNF」商品を権利侵害と認定し、さらに、行政機関は「第三者鑑定機関による鑑定報告書は法的効力を有しない」と明言した。一方で、知財権侵害にかかる民事、行政事件の立証基準の相違により、法院は行政機関が未審査のオンラインでの販売行為について焦点を当てて補足審査し、商標権者の権利行使を確保した。
代理人弁護士
Attorney
肖宴明 Jimmy Xiao
■ 敦和(上海)法律事務所
■ シニアパートナー/副主任
肖宴明弁護士は知的財産権分野で十数年の実務経験を有し、商標出願及び訴訟等事件を大量に代理し、その中で、数多くの商標権侵害、特許権侵害及び不正競争事件が各地法院の年度知財権典型事例に入選しました。肖弁護士はお客様に包括的な知財権保護対策の提案に得意し、また、数多くの企業の顧問弁護士を務め、企業運営、コンプライアンス及び契約紛争解決等分野においても豊富な経験を有します。
时简 Jean Shi
■ 敦和(上海)法律事務所
■ 所属弁護士
时简弁護士は華東政法大学出身であり、法学修士号(知財専攻)を取得し、専門分野は商標、特許及び不正競争に関する権利保護と訴訟です。时弁護士は数多くの国内外企業に商標登録、無効審判、冒用出願商標のモニタリング等の法的サービスを提供し、お客様の所属業界は化粧品、アパレル、医療、栄養品、人工知能など多岐にわたります。时弁護士は上海のある知財代理事務所で4年間の勤務経験を有し、2023年度に『IP上海知産観察』編集部より「知的財産サービス新星」の称号を授与されました。
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撰稿|肖宴明、时简
翻译|郑昕 编辑|陈丝华
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