4月26日、22回目の世界知的財産権デーを迎えるにあたり、各地の裁判所及び関連協会は当日、それぞれに「2021年度知的財産権典型事例トップ10」を発表した。
そのうち、弊所が代理した三つの事案が、それぞれ、「2021年度上海裁判所知的財産権保護規制強化典型事例」(入選事例:カシオ計算機株式会社と上海旋风貿易会社の間の意匠権侵害訴訟)に入選、同時に2021年上海裁判所知的財産権审判白書に掲載、「広州2021年度知的財産権保護典型事例トップ10」(入選事例:カシオ「腕時計」意匠権侵害行政調停案)及び「杭州裁判所2021年度知的財産権司法保護典型事例トップ10」(入選事例:山特電子(深セン)有限会社と杭州菱冠电子有限会社の商標権侵害紛争訴訟)に選ばれた。
「広東知的財産権保護協会2021年度知的財産権典型事例」リスト公表に関する通知
https://mp.weixin.qq.com/s/WaFAxLcEFLVqiupm1GMgkQ
広州市が2021年度知的財産権保護10大典型事例を発表
https://mp.weixin.qq.com/s/UnDHD27FNUt5RnP9pg7VJw
発表|杭州法院2021年度知的財産権司法保護10大事例
https://mp.weixin.qq.com/s/DeiVe5Bvn3kLiy7XDvvWmw
上海高級人民法院が2021年度上海法院知的財産権裁判白書を発表
https://mp.weixin.qq.com/s/4jhI5YQgQspog0ihmFRyYw
2021年上海法院が知的財産権保護を強化する典型事例
https://mp.weixin.qq.com/s/UawnsXuLlG-yZNVJ-wUaXA
01
カシオ計算機株式会社と上海旋風貿易会社等の間の意匠権侵害紛争訴訟
【事件の概要】
原告カシオ計算機株式会社が三つの「腕時計」という名称の意匠権を保有している。2016年、本件被告らは各自の店舗に原告の意匠権と類似する製品を販売したことが原告に発見された。その後、上海知的財産権裁判所に訴訟を提起し、四被告に対して、意匠権侵害行為の停止命令、財産損失及び合理費用合わせて1202万元の賠償金を要請した。
本件は、複数回の開廷審理を経って、裁判所は訴えられた三つの被疑侵害設計が係争意匠権の設計と比べると、全体的に視覚効果の実質差異がなく、全て類似すると認定した。四被告が主観上、共同侵害の意思の連絡があり、客観的にお互いに協力し、共同で意匠権侵害行為を実施した。
賠償金額について、裁判所は下記の要素を考えた。①被疑侵害品の販売範囲は国内と国際の市場に渡ること。②四被告が多数の店舗及び販売ルート保持し、侵害の規模が非常に大きいこと。③原告の専利の認知度が高く、四被告が起訴され後、全部の侵害行為を停止しておらず、主観的悪意は明らかであること。④本件意匠権の設計性が強く、産品利潤への貢献率が高いこと。⑤被疑侵害品の販売量が多く、原告の専利産品との価格差が非常に大きく、原告に与える経済影響が大きいこと。⑥裁判所は四被告の財務帳簿の取調べを命じたが、四被告が提出を拒否したこと。⑦原告は侵害行為を制止するため、一定の合理費用を発生したこと。
最終的に、裁判所は、四被告の侵害行為を直ちに停止し、原告の損失及び合理費用総額880万元の賠償金を判決した。
【本件の意義】
本件に関わった三つの電子腕時計の外観設計は、消費者間の認識度が高く、高い人気を持っている。四被告が悪意による権利侵害行為を実施し、起訴され後も侵害を停止せず、原告の市場を占有し、原告に巨大な経済損失を与えた。裁判所は、権利侵害者が正当な理由無しに帳簿や資料の提供を拒否する場合、原告の主張、及びECサイト販売データーなどの証拠に基づき、侵害者が侵害により得た利益を認めて、三つの案件合計880万元の賠償金を判決した。本件の判決は、知的財産権の侵害行為を厳重に処罰し、設計性の強い意匠権の市場価値を十分に評価した。裁判所は国内外の当事者の知的財産権を平等に保護することを明らかに示している。
02
カシオ「腕時計」意匠権侵害行政調停案
【事件の概要】
広州某会社が意匠権侵害を主業として、被疑侵害品を製造し、数多くの関連会社を通じてECサイトに十店舗以上を設立し、販売、又は承諾販売行為を行った。カシオ計算機株式会社が上記事実を発見した後、弊所に依頼し、意匠権侵害の停止を求めた。上記依頼を受けた後、弊所が速やかにテスト購入、侵害対比、証拠保全などを進めた。ネット調査及び現場調査を通じて、工場及び権利侵害店舗の実質支配者王氏を確定した。権利者の二つの意匠権について、専利権侵害の申立書を広州開発区知的財産局に提出し、処理を求めた。
本件は、最終的に、一か月半の交渉を経って、カシオ計算機株式会社は広州某会社及び実質支配者王氏と『賠償協議』を締結した。その後、広州開発区知的財産局が『行政紛糾調停書』を発行し、調停金額は百万元を超えた。
【本件の意義】
行政保護が迅速・便利・効率優先・低コストの特徴を備えている。一方、司法保護は長期間・コストが高く・一専利権一訴訟の特徴がある。よって、重複侵害、群体侵害、大規模な侵害事件の場合、その解決方法を訴訟に選ぶ場合、司法資源に負担をかけさせやすく、さらに、量産訴訟又は商業権利保護と認識される可能性もあり、かえって良い効果に繋がらないこともある。
本件は目下、广东省最大の調停金額の行政紛糾調停案として、違法行為を打撃すると同時に、専利権保有者の権利を守り、コストを低減した。また、被申立人は違法行為を認めた後、自発的に賠償金額を支払った。行政保護は、紛糾解決の1つの手段として、迅速・便利・効率優先・低コストの特徴は明らかである。専利権保有者の権利を守ることを最大限に実現し、行政機関が専利権の紛争解決に重要な役割を示した。行政執法の効能を高め、専利権保有者の法的権利及び公衆の利益を守り、市場内の類似行為に警告教育の効果を果たした。
03
山特電子(深セン)有限会社と杭州菱冠電子会社の間の商標権侵害紛争訴訟
【事件の概要】
原告の山特電子(深セン)有限会社が第512382号等の商標専用権を保有している。本件被告の杭州菱冠電子会社が行政処罰を受けた後にもかかわらず、「CSTK」「米国山特」標章が付されたUPS産品を継続販売していることが分かった。原告は、裁判所に訴訟を提起し、菱冠電子会社が直ちに商標権侵害行為の停止、100万元の賠償金、及び懲罰的賠償の適用を主張した。
第一審の裁判所は、被告が使用する「CSTK」「米国山特」標章が、原告の商標を侵害すると認定し、被告に対して、侵害行為の停止、経済損失及び合理費用合計15万元の賠償金を判決した。原告は一審判決に不服し、控訴を提起した。第二審の裁判所は、第一審の裁判所が法定賠償を適用したことは法律適用の誤りであると指摘した。被告は侵害行為を実施する前、原審原告からUPS電源を購入するために、『提携協議』を締結した。原審被告は、山特会社が係争商標の専用権を保有していることを明らかに知っているため、悪意がある。且つ、原審被告は、行政処罰を受けた後、ネット店舗で同じ侵害行為を実施し続けていることから、情状は極めて深刻である。よって、裁判所は、原告の賠償要請を全額支持し、第一審判決を取消し、総額100万元の賠償金を判決した。
【本件の意義】
本件は、『最高人民法院の知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈』公布後に懲罰的賠償を適用した典型的事例である。当事者が懲罰的賠償の請求を提起し、具体的な計算方法を明確した案件については、裁判所は、まず懲罰的賠償が適用可能か否かを審査しなければならず、懲罰的賠償が適用可能か否かを審査・判定されていない場合、法定賠償を適用して裁判を行うことはできない。上記の司法解釈に基づき、懲罰的賠償を適用することができるか否かを審査する際には、権利侵害者に権利侵害の故意があるか否か、情状が深刻であるか否かについて審査しなければならない。本件の判決は、知的財産権を厳格に保護するという方向性を十分に示し、悪意が明らかで、情状が深刻な商標権侵害行為を強力に取り締り、登録商標専用権者の合法的権益を確実に保障し、悪意の知的財産権侵害行為に対して抑止力を発揮した。また、本件における懲罰的賠償の基数、倍数の確定方法も、同類事件の審理に参考を提供した。
Harvestingチームは商標権侵害、不正競争、知的財産権の保護及び戦略計画等において豊富な経験と多くの成功事例を有している。上記の事例は、Harvestingチームが証拠収集、権利保護方案の制定、委託者の利益保護・獲得において重要な役割を発揮し、Harvestingが知的財産権保護分野における専門能力と委託者に対する責任感を示している。